ファッションの分野に限らず「ブランドの背景や価値観に共感できる商品を選びたい」という方が増えています。価格や知名度だけではなく、素材の質や職人の技術、製品が生まれる背景にまで関心が向けられるようになってきました。
そんな中、近年注目を集めているのが「ファクトリーブランド」です。この記事では、「ファクトリーブランドとは?」というテーマで、その特徴や魅力、代表的なブランドをご紹介します。
ファクトリーブランドについて知りたい方はぜひ参考にしてください。
ファクトリーブランドとは?
ファクトリーブランドとは、元々他社の製品を製造していた工場、メーカーが、自社の技術や設備を活かして独自に立ち上げたブランドのことを指します。
近年では、消費者のものづくりの背景への関心の高まりに加え、国内生産の減少や価格競争の激化により、下請けに頼らない収益構造を模索するメーカーが増えています。さらに、EC(電子商取引)の普及により、消費者に直接販売できる環境が整ったことも追い風となり、ファクトリーブランドを立ち上げる動きが活発になっています。
SNSやクラウドファンディングを活用して情報を発信し、共感したファンと直接つながるケースも増えています。そうした変化により、無名でも良いものを届けることができる土壌が整い、作り手のこだわりや想いがよりダイレクトに届く時代になっています。
靴、バッグ、家具、生活雑貨など様々な分野でファクトリーブランドは広がっています。
OEMとの違い
OEM(Original Equipment Manufacturer)は、他社ブランドの商品を製造する仕組みで、設計や販売は依頼元の企業が担い、製造のみを請け負う形が一般的です。つまり、OEMではメーカーが製品を「つくる」役割に特化し、消費者の目には「つくり手」の名前が出ることはほとんどありません。
一方、ファクトリーブランドは、製造元である工場やメーカーが自社名義で企画から販売までを行う点が大きな違いです。OEMとは異なり、ブランドとしての世界観やメッセージ性も発信しており、メーカーが主役となって商品を展開しています。このように、どちらも「ものをつくる」という点では共通していますが、関わる範囲や目的に明確な違いがあります。
ファクトリーブランドの特徴

ファクトリーブランドの主な特徴として「高品質」「コストパフォーマンスが高い」「生産者と消費者の距離が近い」というのが挙げられます。
高品質
元々他社ブランドの製造を請け負っていた工場が、自社の技術やノウハウを活かして製品をつくるため、素材選びから縫製、仕上げに至るまで、細部にまでこだわったものづくりが行われ、品質が高い製品を販売していることが多いです。
中には国内外のハイブランドの生産を担ってきた実績を持つ工場もあり、企画から製造まで一貫して自社で管理することで、安定した品質を実現しています。大量生産では対応しきれない手間のかかる工程や職人による手作業が行われていることが多い点も、ファクトリーブランドならではの魅力といえるでしょう。
コストパフォーマンスが高い
高品質ながらも比較的手に取りやすい価格帯で商品を提供しているケースが多く、コストパフォーマンスの高さも魅力です。それは、製造から販売までを自社で完結させる「一貫体制」によって、中間マージンを大幅に削減できるためです。一般的なアパレルブランドでは、企画・デザイン・製造・流通・販売と多くの工程を別会社が担当するため、コストが積み重なり、価格にも反映されてしまいます。
一方でファクトリーブランドは、余計なコストを抑え、その分を素材や縫製といった中身に投資することが可能です。価格以上の価値を感じられる商品に出会えることが、ファクトリーブランドの大きな魅力のひとつです。
生産者と消費者の距離が近い
商品をつくる生産者の顔が見える点も大きな特徴です。公式サイトやSNSなどを通じて、製造工程の様子や職人のこだわり、素材の選定理由などが発信されることも多く、消費者はただ商品を買うだけでなく、その背景にあるストーリーも含めて共感しながら購入できます。
大量生産・大量消費とは対照的に、「誰がどのようにつくったのか」を大切にする価値観が広がっている今、そうした距離感の近さは消費者にとって安心感や特別感につながる要素となっています。
有名なファクトリーブランドといえば?

国内には、独自の技術や価値観を持ったメーカーが展開する、こだわりのブランドが数多く存在します。ここでは、知名度・技術力ともに高く評価されている代表的なファクトリーブランドを6つご紹介します。
それぞれのブランドが持つ成り立ちや個性を知ることで、ファクトリーブランドの魅力をより深く感じられるでしょう。
CURLY&Co.(カーリーアンドコー)
香川県に拠点を構える縫製工場(川北縫製)から誕生したファクトリーブランドです。手袋の産地として有名な香川県で創業した川北縫製は、精密な縫製技術が必要な手袋の製造で培われたノウハウを活かし、1968年にカットソー専門工場を設立。高度な技術とミシン改良によって高品質な製品づくりを追求してきました。
2009年、「カットソー=Tシャツ」という固定概念を超えるブランドを目指し、CURLYとしてスタート。2018年秋冬より現ブランド名「CURLY&Co.」に改称されました。自社工場で一貫生産される高品質なカットソーやパーカーなどのアイテムが人気です。シーズンごとのテーマは設けず、常に着る人の快適を追求したものづくりを行っているのが特徴です。
BATONER(バトナー)
山形県・寒河江市に本社を構える有限会社奥山メリヤスによって、2013年からスタートしたファクトリーブランドです。1951年に創業した奥山メリヤスは、日本を代表するニットの産地である山形で、長年にわたりメゾンブランドや国内外のアパレル企業のOEM生産を手がけてきた老舗ニット工場です。
ブランドを立ち上げたのは、3代目の奥山幸平氏。工場でのものづくりの現場とアパレル企業での企画経験の両方を活かし、高品質なニット製品を自社ブランドとして世に送り出しました。BATONERという名前には、日本の優れた技術と伝統を次の世代へバトンを渡すという意味が込められています。
主力製品は、原料の選定から編み目の設計、縫製、仕上げに至るまで徹底的にこだわったニットウェア。着心地の良さと耐久性、美しいシルエットを両立させた製品は、高い評価を受けています。
Jackman(ジャックマン)
福井県にある老舗縫製工場「タナベメリヤス」を母体とするファクトリーブランドです。創業者・田辺貢氏が1949年に設立した田辺莫大小製作所をルーツとし、戦後のアメリカンベースボールへの憧れを原点に、スポーツウェアの開発に取り組んできたメーカーです。特に野球ストッキングやユニフォームの製造で知られ、全国高校野球や東京オリンピックへの供給実績もあります。
Jackmanのアイテムは、ベースボール文化に根ざした視点から生まれたカットソーやスウェットが中心。吊り編み機による天竺素材や、ワッフル、ヘビーウェイトの生地など、長年蓄積された技術を活かした商品が特徴です。
FACTELIER(ファクトリエ)
2012年に山田敏夫氏が設立したライフスタイルアクセント株式会社によって立ち上げられた、ファクトリーブランドです。ブランド名は「Factory(工場)」と「Atelier(アトリエ)」を組み合わせた造語で、一流のものづくりが集まる場所という意味が込められています。
ファクトリエの最大の特徴は、世界的ブランドのOEMを手がける日本各地の優れた工場とタッグを組み、職人の技術と情熱が詰まった製品を開発している点にあります。工場と二人三脚で作り上げた製品は、華美な装飾ではなく、素材の質感や縫製の美しさで勝負する「語れるもの」をコンセプトとしています。
流通に中間業者を介さない工場から消費者への直接販売を採用することで、高品質な商品を適正価格で提供しています。
PADRONE(パドローネ)
日本のシューズファクトリーブランドで、熟練の職人による伝統技術と現代的なデザイン感覚を融合させた革靴を製造・販売しています。ブランド名の「PADRONE」は、イタリア語で親方・雇い主を意味し、職人の世界において技術を受け継ぎ、磨き上げる姿勢への敬意が込められています。
PADRONEの靴は、足馴染みの良さや柔軟性に優れ、履くほどにフィット感が増すのが特徴です。また、手作業による繊細な工程と最新技術を組み合わせることで、シンプルながらも独特の存在感を放つシューズに仕上げられています。
クラシックなフォルムに現代的なニュアンスを加えたデザインは、ビジネスにもカジュアルにも対応可能で、幅広い層から支持されています。
NARU(ナル)
大阪・泉大津市に本社を構える南出メリヤス株式会社が展開するファクトリーブランドです。創業から70年以上にわたり培ってきた縫製技術と素材選びのノウハウを活かし、すべての工程を自社で一貫生産する体制を整えています。
着心地の良さや美しいシルエットが魅力で、生地の特性に合わせた最適な縫製や、熟練パタンナーによる精巧な型紙づくりが、高い完成度と自然なフィット感を生み出しています。希少な日本製ニットや高性能ミシンを活用し、日常に寄り添う上質なカジュアルウェアを提供しています。
ファッションについて学ぶなら

ファッションに興味があり、将来アパレル業界で活躍したいと考えている場合には、関連する専門学校や大学などの教育機関で学ぶことが大切です。ファッションはセンスや感性だけでなく、服の構造や色彩理論、素材の特性、トレンド分析、マーケティング、販売戦略など、幅広い知識と技術が必要な分野です。
教育機関では、業界で活躍するためのカリキュラムが組まれており、パターンや縫製、スタイリングから商品企画まで、必要な知識と技術を幅広く学ぶことができます。
また、インターンシップや企業との連携授業を通じて、実際の現場を経験できる機会も豊富にあります。同じ志を持つ仲間と刺激し合える環境も、学びをより豊かなものにしてくれるでしょう。
「ファッションについて学びたい」という方は、まずは関連する教育機関のオープンキャンパスや学校説明会に参加して、自分に合った学びの場を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
ファッション専門学校「東京服飾専門学校」
本格的にファッションを学び、業界でのキャリアを築きたい方は「東京服飾専門学校」への進学もぜひご検討ください。70年以上の歴史がある本校は、ファッション業界で活躍する多くの人材を輩出してきた実績ある専門学校です。
スタイリストやモデル、ファッション販売などの現場を目指す「スタイリスト科」「ファッションビジネス科」、そしてデザイナー・パタンナー・衣装製作を目指す「アパレル造形科」「アパレル技能科」など、多彩な学科がございます。すべての学科で、現場経験豊富な講師陣が基礎から丁寧に指導し、実践力を重視したカリキュラムを展開しています。
また、インターンシップや企業とのコラボ授業、ファッションショーなど、在学中からリアルな現場に触れる機会も豊富です。充実した就職サポート体制により、卒業後の進路も安心です。
東京服飾専門学校では、ファッションを仕事にできる環境が整っておりますので、ご興味がございましたらぜひ詳細をご覧ください。
ファクトリーブランドについて
ファクトリーブランドとは、OEMなどで培った技術をもつ工場が、自社のこだわりを活かして立ち上げたブランドです。高品質でコストパフォーマンスに優れ、作り手の顔が見える商品として注目を集めています。
流行やブランドネームに囚われず、本当に良いものや価値観を大切にして選びたい方にとって、ファクトリーブランドは魅力的な選択肢といえるでしょう。日本のものづくりの力が詰まった製品に触れることで、新たなファッションの価値観が広がるはずです。興味を持った方は、ぜひ一度その世界に触れてみてください。




