~就活室便り~#35 PRIDE&JOY TOKYO TEXTILE SCOPE 訪問記2
みなさんこんにちは。就活室のHANAZONOです。当たり前ではありますが、
晴れると暑いですね。もうこの時期になってくると太陽の強さが全然違います。
冬の間は輻射熱、っていう言葉が心地よく、なんか暖かくて気持ちいいイメージ
がありますけど今は太陽光線というより、本当にビームですよね。結構陽光が
やけどするほど痛いです。晴れていればもう朝からお日さま燦々なので半袖以外
必要じゃなくなりました。同じ気温でも晴れの日と、曇りや雨の日と、体感気温
が全然違います。改めて太陽の偉大さを知る今日この頃です。
ただそれでも、電車の中の冷房は苦手で、だけど何か羽織ってると電車以外では
暑いしなあ、という話はこの前確かしましたよね。なんかSDGsがこれだけ叫ば
れる世の中で少しくらい冷房の温度上げてくれてもいいのになあ、と思う反面、
熱中症の件を言われると発言を差し控えざるを得ず、当面何かで対策していく
しかないですね。
いずれにしろ5月から真夏日どころか猛暑日のところもあらわれ、それが少なく
とも10月まで続くと思えば、アパレル業界だけではなくとも対策を考えねば
ならず、以前は定例行事だった6月と10月の衣替えの習慣も実際の気候との整合性
がなくなり、少なくとも一斉にそろっての衣替えの習慣はなくなりました。
少なくとも真夏日、猛暑日が半年にわたって観測される現在、かつては企画の
華だったコートの企画の重要性はどんどん薄れ、レイヤード等の単品セット
アップが企画の中心になり、商品単価が低下するためかなりの数量をこなさない
とアパレル企業は従来の売り上げの維持は難しくなってきます。つまり1マーク
当たりの商品の単価が下がり、奥行きも減り、その代わりマーク数が膨大に増え、
従来の企画生産ペースでは全く対応できず、そこにアウトソーシングの入り込む
余地が出てきた、というのが昨今の現状だと思います。いずれにしろかつての
アパレル企画は秋冬60~70%で、春夏は単価も安く、アイテムも限られるので、
特に盛夏物に関しては避けて通れるものなら避けて通りたい、と、言うのが本音
のところでしたが、現在では春夏企画は構成の7割を超え、避けては通れないどこ
ろか企画のメインになっている、と、言っていいと思います。そしてテキスタイル
の分野でも、冷感触感、吸汗速乾、UV, 汗染み防止、等の機能にあふれた素材で
あふれ、こちらでもまさに企画の花形となっています。そんな来春夏企画の生地を
展開する各テキスタイルメーカーのブースをレポートしていきたいと思います。
まず最初にお伺いしたのは山梨の企業ブースです。5社ほどの企業が合同して
出展されていて、素材、糸としては絹、カシミヤ中心の高級品です。写真をご覧
ください。
一番右のハンガーにかかっている青と白に見える生地ですが、これはニードル
パンチという素材で、飾り糸を記事表に乗せ、それを裏から剣山でたたき、
その糸が生地内に引っ張られ定着する、という手法で、白く見える部分は絹の
生糸です。織りも編みもしていない、糸に加工もしていない、いわゆる「真綿」
という状態で表面を飾っています。その風合いといったら、大トロ?フォアグラ?
何に例えたらいいのかよくわかりませんが、正直言って世界にこれほど気持ちの
いい風合いのものはないです。みなさまも一度触ってみる機会があればいいん
ですけど、皆さんのよく行かれる生地屋さんの店頭に並んだら10万円、という
ような金額だと思いますよ。こんな生地が触り放題なので本当に展示会って、
良いですよね。
先ほどの1社以外の各社の展示の写真をご覧ください。やはり使用原料はカシミヤ、
絹、麻、等が多く、見た目に高級品とわかります。
手織りに近い機械でこれだけの機屋さんが集まっているところなら一度学生を
連れて見学させて頂いてもいいかなあ、と思い、東京からの所要時間をお伺い
したところ、新宿からバスで1時間ちょっとらしいですね。工場見学候補の一つ
となっています。生地作りから興味を持つと最終製品も違ったものになってくる
んじゃないかと思いますし、少なくとも生地選びの目は変わってくるんじゃない
かと思います。織物工場見学、一度やってみたいな、と思います。
次にご紹介するのは東レのブース。東レさんといえばこの前身のジャパン
クリエーションの時代から皆勤賞で、なかなか資料が出てこないのですが、初回の
展示会はまだ20世紀だったと思います。それから20年以上、技術的に合繊界の
トップを守り続け、そして今でも毎シーズン新素材、新加工にチャレンジし続け
ている、というのは並みの努力ではできるものではありません。当然その継続力が
もたらす商品の完成度は高いです。写真をご覧ください。
今回はデザイナーとコラボレーションしていることもあり、特に完成度が高いです。
表革調、スエード調、シルクライク、天然ライク、と、各素材の特徴を忠実に再現
しつつ、イージーケア、吸湿性、ドレープ、リサイクル、等、様々な付加価値を
加えた素材群はもう見事としかいうほかありません。ブルーのワンピースはシルク
ライクな合繊なのですが、光沢、落ち、風合い、発色性がシルクに近いだけでなく、
衣擦れの音まで再現しているのです。なんか大会社がそこまでマニアックな開発して
いいものか、という気はちょっとだけしますが、20数年たった今も東レブースは
目の保養ブースであり続けてくれています。その間超大手紡績メーカーでも繊維部門
から手を引いたり、テクスタイル部門を売りに出したりしていますから、やはり現状
維持って挑戦し続けなければできないということを思い知らされます。目の保養と
自分への戒めを頂けるブースが20年以上ある、ということ自体が素晴らしいことで
今後もずっと見続けていたいですね。
テキスタイルコンバーターではやはりサンウェルさんが好調のようです。自社でテキ
スタイルを企画し、自社で在庫リスクを背負い備蓄しフォローしていく、それがテキ
スタイルコンバーターとしての当然の勤め、といえばそれまでなのですが、バブル
以降の不況と産業構造の変化はそんな当たり前の役割を許してくれませんでした。
サンプル生地、サンプル作成は日本で行うが本生産とその時に使用する生地はすべて
海外で、という時代になれば当然在庫なんて持ちようがありません。こうして素材、
縫製業両方が瀕死の状態になっていく中で、あえて時代に挑戦するように自社リスク
で在庫を持ち続け、他社の衰退を尻目に成長し続け、現在ではテキスタイルコンバーター
の中ではベスト何位かに入るほどになりました。そんなサンウェルさん、今回も
大きめのブースでご出展です。トレンド素材を集めた写真からご覧ください。
光沢、シャンブレー、透明感、というキーワードに沿って開発された商品群が並びます。
奥のほうには先染め素材がずらりと並んでいるのが見えるでしょうか。シャンブレー、
先染め、等糸から染めて備蓄せざるを得ずかなりリスクを伴うものですがこちらでは
当たり前のように並べてあります。昔、超大手スーパーの婦人服バイヤーと商談して
いた時に、「リスクないところに利益なし。リスクを伴ってこそ初めて利益の花が咲く。」、
とおっしゃっていたのを思い出します。でもそれも言うは易しなんですよね。なんだ
かんだ言ってやはり実行には相当の困難が伴います。いずれにしろ企画の精度はしっかり
上げて良いもの、売れるものはしっかりリスクししっかり販売する、と、これが会社の
基本ではあるのですが、その基本にこだわりしっかり実行するというのは兎にも角にも
大変なことです。それができない会社は生き残れなかったし、生き残った会社はそれを
続けていくしかない、ということだと思います。大変ですけど、でも本当の仕事の面白さ
って、そこだったりするんですよね。というわけで、写真をもう一枚ご覧ください。
きれいな夏色のついた麻および麻複合素材のコーナーです。見た目にも着ていても涼しい
だけでなく、イージーケア、吸汗速乾、等機能的にも優れた素材が集まっています。麻混
素材はこの気候変動に合わせて着るシーズンも増えそうですよね。
次にお伺いしたのは大手繊維商社のモリリン様です。今回は糸のプロモーションという
ことですぐに受注に結び付くとか、そういう話ではありませんが、特に現在もう日本で
しか生産されていないトリアセテートおよびキュプラを中心に様々な生地を陳列して
いらっしゃいました。写真をご覧ください。まずルミナスという糸を使ったコーナーです。
この素材はポリエステルの芯にキュプラを巻いたもの、とイメージしていただければ、
と思います。高級裏地で有名なキュプラは肌触りがよく、やわらかく、吸湿性に優れている、
という良い点はたくさんありながら、しわになりやすい、ケアが大変、などといった
欠点も持っています。それをポリエステルを芯にすることで解決し、表面にはキュプラの
良さだけが出て、それにイージーケアが加わった、とイメージされるのが一番かと思います。
写真のTシャツもキュプラらしい光沢もたっぷりあって、実際触ってみてもまさに高見え
する素材ですね。もっともキュプラの弱点の一つは「値段」、だと思うのでそちらの方も
頑張って頂ければいいな、と思います。それでは次の写真をご覧ください。
こちらはTST、という素材で、トリアセテートとリヨセルの複合素材です。両方とも
木材を原料とした素材で、吸湿性と速乾性、ふくらみ、柔らかさとドレープ性、等こちら
も2つの素材のいいとこどりのような形で、快適に涼しく夏を過ごせるような様々な機能を
持たせてあります。その他、麻でも涼しさにこだわるためラミーを使用しそれをポリエステル
と組み合わせたもの、トリアセとレーヨン、トリアセと綿、トリアセとポリエステルとを
組み合わせ、様々な機能のいいとこどりをした素材を展開していらっしゃいました。それを
織物、編物両方で無地から柄物、地組織変化、等いろんな形で紹介していましたので、今後
の展開を期待したいです。以下に画像貼ります。
暑い夏を少しでも快適に過ごせるよう、そのための新素材にはこれからも注目していきたいですね。
最後に、柴屋さんのブースを紹介したいと思います。こちらは特に人気で元気があり、活発な
お客様との商談が行われていたブースです。まずは写真から。
素材は綿、麻をはじめとする天然素材中心、こちらも100%自社リスクで在庫を積み、フォロー
していくスタイルです。素材もわざとやや猥雑に並べ、活気のある営業全員でお客様をお迎え
しています。現在では立場上生地を発注する可能性もほぼなく、出展者から見れば単なる邪魔で
しかない私のような立場の人間にも親切丁寧にご解説頂き感謝することしきりです。(実は来場者の
つけるネームバッジがバイヤー、プレス、学校関係、等で色がわかれていて出展者にはすぐわかる
ようになっているんでした。)この展示会で接客要員のほとんどは実は新入社員とのことで、
入社から約1か月でこんなにセールストークが話せるようになるんだ、というのが一番の驚きで、
それはこの展示会の目的が半分新入社員研修を兼ねているから(、と想像するだけで直接そう
聞いたわけではないのですが)、ということもあると思いますが、私を対応してくれた方も新入社員
ということでしたが、とにかく立派に商談なさっていましたよ。こんな感じで新素材だけでなく、
次代を担う新人達を見るのは結構気持ちいいものです。各社にとって、新素材開発は会社としての
大命題で、最も重要なことの1つですが、新人を育て上げることも、これは今一社だけの問題のみ
ならず業界全体で考えていかなくてはならない問題でもあります。素材と人がいつまでも元気で
フレッシュだったら大抵のことは何とかなりますって。素材開発力と人材育成、登用に優れた会社
がこの業界のリーダーになっていくのは必然だと思います。ベテランの熟練の技を若手に引継ぎ、
業界全体がどんどん発展して行くといいですね。
以上、名前も変えリニューアルオープンしたTOKYO TEXTILE SCOPE のレポートをお送り
しました。コンセプト、新素材の量、質共に世界有数の規模の素材総合展といっていいと思い
ます。あとは展示会のせいというよりは日本の商習慣のせいではあるのですが、これがより
実需という点で実際の商売に結びついて行けば文句なしだと思います。現在日本の展示会で、
たとえいい商品を見たからと言ってその場で注文する人はほぼゼロだと言っていいと思います。
今回一部のブースでその場で発注しているバイヤーがいらっしゃいましたが、それは必ず海外の
バイヤーです。日本のバイヤーは生地スワッチだけを依頼し、その後長い長い社内検討会を経て
サンプル着分を収め、展示会を開いてその後さらに社内での検討を重ね、この展示会でピック
アップした素材の発注と言ったら早くても半年後、といった感じになると思います。日本の
アパレル、バイヤーは海外に行っても同じペースで商談しているので適時に適切価格で商品を
仕入れるのが難しい、と思うことが多々あります。適時、ということもそうですけど海外では
発注もしないものの値段交渉なんて存在しません。値段を提示して発注が出ない、ということは
即交渉決裂、ということですし、仕入れするために果てしない社内の根回し、プレゼンが続く、
ということも海外ではなく、そもそもバイヤーの仕事はバイイングなのでその場で発注できない
バイヤーが展示会を訪問することはないからです。いずれにしろこれはファッション業界の問題
だけではないと思うのですが、いつかは権限のあるバイヤーが適時、適切価格のバイイングを
していかないと、特に海外メーカーと直接競い合う環境となった現在の市場で対抗していくのは
だんだん難しくなって来るんじゃないかと思います。
と何となく苦言を呈する形でこのレポートを締めくくることになってしまいましたが、技術力も
人材にも明るいところがいっぱいあるわけで、元気な会社、老練な技術、若い人材が引っ張って
行けばまだまだ発展していける業界だと思います。今回の展示会、アピールは十分にできている
と思います。その技術を活かしてより意匠に凝るとか、より産地と結びついた情報発信をして行
けば、もっともっと素晴らしい展示会になっていくんじゃないか、という感想を持ちました。
気候変動の今に対応して素材開発もどんどん変わって行きます。
またその変革、改革の途上にある次回の展示会にも期待したいと思います。
ではまた。
HANAZONO
スタイリスト・デザイナー・衣装制作,MD,パタンナー、EC担当、アパレル販売職の就職はtfac
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HANAZONO